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意見・異見
「免税事業者のための簡易(注1)なインボイス制度の創設」を
令和2年12月28日記
適格請求書等保存制度(インボイス制度)が令和5年10月から導入される。日本商工会議所は令和2年10月9日、「中小企業における新型コロナウィルス感染拡大・消費税率引き上げの影響調査」結果を公表した。これによると課税事業者の約2割が「免税事業者との取引は(一切または一部)行わない」「経過措置の間は取引を行う」と回答し、免税事業者との取引を見直す意向を示している。これにより免税事業者は、課税事業者になるか、ならないか、あるいは、廃業を検討するか等の選択を迫られることになる。
この結果公表から懸念されることは、インボイス制度の導入により「小規模事業者たる免税事業者が、取引から排除され死活問題になる」のではないか、ということである。
確かに、免税事業者が課税事業者になる道はあるが、それでは消費税法第9条(小規模事業者に係る納税義務の免除)の存在意義がなくなろう。免税事業者が、今までどおりのまま取引から排除されない方法を模索する必要があるだろう。
免税事業者か課税事業者かの分岐点は、年間売上高が1,000万円かどうかであるが、このボーター上を行ったり来りする事業者は多いように思われる。そうすると、インボイス制度の導入によって、この分岐点を行き来する事業者は、その都度、その都度インボイスの登録と取りやめの申請を行うこととなり、煩瑣な手続きを強いられることになる。そうであれば、課税事業者用インボイス制度(正規)と類似の、免税事業者用のインボイス制度(簡易)を創設することで上の問題は解消されるのではないかと思われる。
例えば、免税事業者用の登録番号については、法人の場合NT+法人番号とし、法人以外はNT+ 13桁の数字(今ある8桁の整理番号を13桁に改組)とする、など。そうして課税事業者は今まで通り、帳簿に記帳することによって仕入税額控除が受けられることにする。そうすれば、免税事業者が取引から排除されることもなくなるだろう。副次的には、免税事業者といえども、正規のインボイス制度への馴致となるはずである。
結論としては、すべての事業者にインボイスの登録番号を附番(注2)することになるが、免税事業者、課税事業者の違いは、大雑把に言えば、単に事業者番号に「N」があるか、ないかだけの差となり、その余は、今まで通りとする。繰り返すが、課税事業者は今まで通り、帳簿に記帳することによって仕入税額控除が受けられることにする。そうすれば免税事業者との取引を見直す必要はないことになる。
政府は働き方改革を唱導し、給与所得控除等の一部(10万円)を基礎控除に振り替え、フリーランスや起業、在宅で仕事を請け負う子育て中の女性などを応援する税制改正を行っている。経済のデジタル化によりシェアリングエコノミー等新分野の経済活動(ギグワーカー)による取引が活発となり、これによる申告所得者の増加も予想される。このように将来的には小規模事業者との飛躍的な取引が見込まれる中、インボイス制度の導入により、小規模事業者たる免税事業者が、取引から排除される等不公平の無いように手当されなければならない。登録申請の受付は、令和3年10月1日から開始されようとしている。これまで述べたような「免税事業者のための簡易なインボイス制度の創設」を一考して頂きたい。
以上
注)1.「簡易」とは、単に従来の請求書、領収書等に事業者登録番号を附番することで済ませることを言う。
2.課税事業者、免税事業者を問わず、法人番号、13桁の数字等で附番し、免税事業者から課税事業者になった場合は、それまでの登録番号「NT…」から単に「T…」とする。課税事業者から免税事業者になった場合は、その逆とする。そうすれば、数字番号そのものは、不変となる。
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